注目メーカーを徹底解剖

ユニットとパーツを組み合わせて完成させるオリジナル収納―キュビオス(パナソニック)

システム収納のトップブランドであるパナソニックのキュビオス。
その開発に至る背景やパイオニアならではのこだわりとは?
設計者の瀬戸氏に本音で突撃取材した。
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「キュビオス」開発秘話

出逢い
日本の壁面収納の先駆けとして2003年に発売されたシステム収納「キュビオス」。そもそも原点になる家具との出逢いは、毎年イタリア・ミラノで開催される世界最大規模の家具見本市『MILANO SALONE(ミラノサローネ)』。ヨーロッパ中のメーカーやデザイナーが集結し、その年のデザイン・トレンドがいち早く発信されるMILANO SALONEで、初めて『システム家具』というものを発見!当時の日本ではまだ『壁面家具』は存在せず、『置き家具』が売り上げを伸ばしており、リビングファニチャーに代わる商品としてもTV台程度のものだった。
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閃き

リビングにモノがあふれゴチャゴチャして片付かない、収めるスペースもない、という収納問題は一般的。そこで日本の狭小住宅には、壁面のサイズにぴったり収まり、壁に作りつけて整理する収納家具が必要ではないか。このシステム収納でリビングを一気にすっきりさせよう!と、早速上司とデザイナーとでタッグを組み開発へ。「これは売れるぞ!!」

売れるカタチ

複雑なものは売れないと予測し、カンタンに提案できるようキュービックの形に決定。ヨーロッパには古くからシステム収納があり、作り付けの『収納家具』の実績はあったものの、横長のキューブ状のものが主流。確かに幅方向はインパクトがあるようだ。しかし日本の住宅事情では余裕がないので、幅ではなく高さ方向で展開することに。そして様々なモノのサイズに対応でき、使い勝手のよいサイズにして、約300品番でスタート。それでも半年間は思うように売れず、原因は初めての商品だったため提案力に欠けたこと。そこでWebのアイハウズ(かんたん見積り)を活用してもらうことで、誰もが提案できるようになり売上UP!

売れるようになると要望が多数でてくる、毎年レベルが上がる、さらに仕様も上がっていく―。2003年から2006年までは、無我夢中にずっとこんな感じでやってきたとのこと。

高品位を目指す

狭小住宅に受け入れやすいサイズスペックや合理化を追求することはもちろんだが、並行して瀬戸氏が心掛けていたことは『高級感』だった。いつでも安定した価格で値下げはしない、お客様が求めるパナソニック仕様にしたい、『キュビオス』が欲しいと指名買いをされるには…と思案して出した結論は『商品=高級志向』。そのためには、日頃から高級ホテルや美術館、老舗旅館のしつらえを積極的に見て歩き、現在でも感性を磨き続けている。常にアンテナを張ってトレンドと高級感を取り入れるという、ブランディングに成功した秘訣はここにあり!

販売戦略

リビングに特化

キュビオスはリビングに特化する。システム収納の競合他社メーカーにはベンチマークされ、多種多様な展開をしている中、追っ掛け合うことはイタチごっこになると判断し、キュビオスはリビングに絞った。耐震面でも壁付けで固定されることで転倒せず安心であることや、家電メーカーならではの利点を生かして美しく収納できる「家電対応」の工夫もキュビオスならでは。ホームシアターと合わせて空間を提案してくれる『リビングシアター』にキュビオスは不可欠である。

今後の方針

「こういう収納ができるんだ!という気付きを与えていくのが役目。実際にどう使うかはお客様が決めることです。私たちはスペースを提供し、オプションは売りません。ダイケンさんやリクシルさんが追いかけてきているので、ドキッとすることもあります。でも踊らされることなくパナソニックのポリシーで、自信を持って売っていきます。」新登場から10年。現在では3000品番あり、1億通りの展開ができる『キュビオス』である。